研修報告

<第45回ポーランド・ベルギー研修報告会の概要>


6月12日(金)、第45回(2019年度)資生堂児童福祉海外研修(ポーランド、ベルギーにて実施)の研修団が、研修主催者である当財団の理事長大矢和子に対し、研修結果の報告をしました。新型コロナウィルス感染症の感染予防のため、オンライン会議システムによる報告会でした。

報告会では、冒頭、第45回研修団の団長都留和光氏(二葉乳児院院長, 東京)と特別講師高橋温氏(新横浜弁護士事務所弁護士)からご挨拶をいただき、その後、研修団を代表し藤永亜津沙団員(浦上養育院, 長崎)と岡部匡俊団員(中日青葉学園わかば館, 愛知)が報告をしました。

第45回研修の中心となる研修テーマは「子どもの権利」でした。報告では、1989年、「国連子どもの権利条約」の成立に大きな役割を果たしたポーランドと、多様性を許容する社会で子どもの権利擁護を推進してきたベルギーにおける、子どもと家族をめぐる制度政策、支援の実際について、発表を行いました。合計18ヵ所への視察と6名の講師による講義やセッションの内容を、子ども支援の現場(児童養護施設等の児童福祉施設)で働く者としての視点からまとめ、最後に、主に、次のような内容の提言を述べました。


◎提言◎
・社会的養護※に携わる自分たち自身が子どもの権利を擁護する当事者であるという意識を高めることが必要である。『子どもの声を聴く』スキルを持って専門性を高めるなど、児童福祉施設職員の資質と能力のさらなる向上が求められる。
・子どもの権利擁護を推進するため、尊重された体験が少なかったかもしれない子どもたちの親たちに対しても、その思いを聴き、尊重する姿勢が大切である。
・子どもにとって家族は重要な存在である。そしてその家族への支援のなかでも、家族の問題の重篤化、慢性化を防ぐために予防的支援は欠かせない。児童福祉施設の職員として、施設で培ってきた子育ての知識やスキルを社会に還元することは、施設が果たすべき役割である。
・訪問国では、科学的根拠と「親には課題解決の力があり、子どものために最善のことをしたいと思っている」という親への理解に基づき、支援に係る判断がなされていた。私たちには、意見の聴き取りから更に一歩進んだ、子どもと親とのかかわり方が問われている。また児童福祉に係る長期的な調査研究を官民で協力して進め、科学的根拠を強化していく必要がある。 支援の現場で得た知見を支援者間で共有し、専門性を高める人材育成にも取り組んでいきたい。
・家族が孤立せず、ストレスや課題を軽減し、親子関係を安定させるため、地域の家族、支援機関、児童福祉施設が有機的につながり、多様化する家族を支える仕組みの構築が求められる。一つひとつの小さな積み重ねを大事にし、支援する社会の実現を目指していきたい。

※社会的養護:社会的養護とは、保護者のない児童や、保護者に監護させることが適当でない児童を、公的責任で社会的に養育し、保護するとともに、養育に大きな困難を抱える家庭への支援を行うことです。社会的養護は、「子どもの最善の利益のために」と「社会全体で子どもを育む」を理念として行われています。(厚生労働省ウェブサイトより)

第45回研修報告(動画)
提言を含めた研修報告は、こちらから動画(約65分間4.72 GB, 5,078,458,492 バイト)でご覧ください。(一部、音声が乱れ、聞きにくい箇所があります。ご了承くださいますようお願い申し上げます。)

第45回研修報告資料(PDF)
報告会資料は、こちらからご覧ください。

第45回研修団団長/特別講師による挨拶


■都留和光団長ご挨拶

新型コロナウィルス感染症の影響で、日常生活が困難な状況にある人たちが世界中にいます。まずは、この感染症で命を落とされた多くの方々に対し、哀悼の意を表します。そして、こうしたなかで私たち45期の報告が行えることに感謝いたします。

第45回資生堂児童福祉海外研修の訪問国は、ポーランドとベルギーでした。昨年は、国連で子どもの権利条約が採決されて30年、日本で批准されて25年という節目の年でした。国内では、平成28年の児童福祉法改正、社会的養育ビジョンという大きな流れがあり、団員たちはこうした情勢のもとで社会的養護の場で働いています。児童福祉法の改正のポイントは、子どもが権利の主体であることを明確にしたことです。
社会的養育ビジョンの指し示すものは、すべての子ども家庭が生活する地域社会の充実である、と思います。市町村、都道府県、国それぞれの単位の支援体制の構築が大切でありましょう。

研修企画は実にタイムリーなものであり、ポーランドとベルギーで学んだ2週間が、団員の意識や心を大きくしたことは間違いありません。この報告を起点に始まる私たち一人一人のアクションがこの海外研修の証と考えます。今後も、私たちの活動を見守っていただければと願います。

世界が1日でも早く落ち着きと、安心と安全の日々を取り戻し、世界中の往来が自由になることを祈念して、団長挨拶に代えさせていただきます。ありがとうございました。



■高橋温特別講師ご挨拶

このたびは海外研修に参加をさせていただき、ありがとうございました。私自身は特別講師と言う肩書に見合うだけのお役に立てたとは思いませんが、バラエティに富んだ研修先を確保していただき、都留先生のあたたかい見守りと団員の皆さんの積極的な姿勢とで、とても良い研修ができたと思います。私にとっても、子どもの権利について深く考え直す機会になったと同時に、これまであまりなじみのなかったポーランドとベルギーに実際に行き、なまの様子を見られたこと、バラエティに富んだ種類の視察先を訪問できたことで、大変勉強になりました。同時に、全国各地の児童福祉の現場で活動している団員の皆さんから、現場の様子や取り組み、悩みなどをお聞きしたことも、大変勉強になりました。

今回の研修テーマ「子どもの権利」は、「権利」ですから、特に法律や司法に深く関わる分野で、裁判所の関わりが意識されるテーマでした。じっさい児童福祉と司法は、一時保護や施設入所、親権制限、特別養子縁組など、制度上も連携しており、福祉の充実を考える上で司法制度の理解は今後も重要になっていくと思います。

45期の皆さんは、司法を意識できる新しいタイプの施設職員として今後各地で活躍してくれるでしょう。45 期 は台風による帰国延期、コロナによるWEB報告会など、自分たちにはどうしようもないハプニングに翻弄されているのが特徴だと思いますが、団員の結束力は非常に強く、安心して見ていられます。今日の発表も大変素晴らしいものになると確信しています。

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